1.地獄の熱さ
地獄の熱さは人間の経験を超えたものであり、その熱さを想像することは、ほぼ不可能である。地獄に落とされる、這い上がっていくと水を飲ませてもらえる、しかし、その水は煮え湯。這い上がっては煮え湯を飲まされまた地獄へ突き落とされる。かといって命が奪われるわけではなく、これが永遠に繰り返される。聖典クルアーンにおいても、そんな地獄の在り様が示されている。
2.宇宙に還る
地獄の熱さの中、人間は生存し続けられるのであろうか。もちろん生身の人間がという意味である。人間の骨は1600度で溶けだすとされる。さらに加熱を続けると5000度でリン酸カルシウムがプラズマ[1]化するとのこと。そうであるとするならば、焦熱地獄とは、人間がプラズマ化される場所ととらえることができるかもしれない。復活後の人間が、前世での肉体をそのままに手に入れるのか、そうでないのか、あるいは、あの世がどこにあるのかなど、疑問は残るが、熱さを感じ、しかも、その熱さにも物質的な変容をきたさないとするならば、もはや生身の人間の技ではない。
しかしながら、物質的には、プラズマ化が必至である。プラズマに解体されてしまったとなれば、それが帰っていく場所は、プラズマで満たされているとされる宇宙ということになろう。そしてまた新たな創造の用に供される。こう考えてみると、ここに輪廻や因果応報の生じる余地はない。
3.火葬では土に還れない
最後の審判で、秤が重い方に傾いた者にあったなら、幸せな来世が約束されるが、骨の行方は埋葬方法によって大きく異なる。骨のプラズマ化からは免れ得ない。
土葬であれば、50年から100年をかけて土に還る。火葬の場合には、骨がセラミック化してしまうため、土に還ることはない。一説によれば、骨壺の中で水に溶けてなくなるとされるが、真偽のほどは定かではない。リン酸カルシウムは、水にも油にも溶けず、酸によって溶かされるだけだというからである。土に還ることがなければ、地球の循環のサイクルは乱されることにもなる。
4.火葬のCO2は、人が1年長生きしたのと同じ
しかし話はそんなに単純ではない。環境への負荷を考えたとき、「遺体にホルムアルデヒドを詰め込んで、コンクリートで囲って埋葬するよりは、火葬の方が、環境に与える害は小さい」のであり、現に米国では、環境への配慮も手伝って、2015年以降、火葬が土葬を上回るようになってきていると指摘される。とはいえ、火葬では、燃焼によるCO2排出の問題を避けて通ることができない。(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/110700644/?P=1)
火葬に際して排出されるCO2は、ご遺体一つについて200から300キログラムとされる。これは、自家用車の1か月分のCO2排出量、あるいは、人一人が1年間の生活・活動を通じて排出するCO2の量に等しいとされる。
5.環境負荷軽減の取り組み
ヒンドゥー教の火葬においては、木材を燃料とするため、森林破壊、水質汚染の両方の問題を抱えているという。そのインドにおいて、近年、火葬に使う木材を減らす試みにかなりの支持が集まっていたり(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/110700644/?P=2)、日本においても、棺を紙製にする工夫が葬儀業者によって施されたりするなど、CO2削減の動きはみられる。
6.土に還る新しい方法
人生の最後に、環境破壊やプラス一年分のCO2を排出することを避ける方法にも注目が集まっている。
「水火葬」「アクアメーション」とも呼ばれるアルカリ加水分解によって遺体を液状に溶かす方法である。「カーボンフットプリントが、従来の火葬に比べて約10分の1であるばかりでなく、火葬同様に骨は残り、処理過程で出てくる大量の有機液体は、肥料として優れるため農場で、やまた排水の水質改善に役立つため下水施設が歓迎しているとさえされる。((https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/110700644/?P=3))
人間は土からつくられたというのが、クルアーンの教えである。現在、主流になっている土葬でも火葬でも、肉体を土に還すことは容易ではない。大地に対する恩返しに葬られ方を見直してみるのは悪くない。
参考記事
埋葬に関するアメリカの現状については、以下の記事も参考になる。
[1] プラズマとは、固体・液体・気体に続く物質の第4の状態。「プラズマ(電離気体[1], 英: plasma)は固体・液体・気体に次ぐ物質の第4の状態[2]である。狭義のプラズマとは、気体を構成する分子が電離し陽イオンと電子に分かれて運動している状態であり、電離した気体に相当する。狭義のプラズマは、プラズマの3要件をみたす。広義には、プラズマの3要件を一部みたさず、非中性プラズマ、強結合プラズマ(微粒子プラズマ、固体プラズマ)を含む。」
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